PROJECT REBORNVol.003 — ElementsA journal of rediscovery.
はじめに
Project Reborn の第三回は、「Elements」について書こうと思う。
Vol.001 では、自分自身と会社の原点を見つめ直すことについて、そして Vol.002 では、その考えを少しずつ形にしていくための場所として、神戸に小さな Workspace を構えることについて。
約13㎡の小さな部屋。
三つ並んだアーチ窓。
高い天井。
まだ何も置かれていない空間。
そこに何を置いていくのかを考えているうちに、これは単なる部屋づくりの話ではないと思うようになった。
床、机、椅子、ラック、アーカイブ。ひとつひとつは、ただの道具や家具に見える。けれど、限られた空間の中で何を選び、何を置かないのかを考えることは、そのまま会社のあり方を考えることに近かった。
今回は、Workspace を形づくる要素を通じて、小さな会社にこれから何が必要なのかを考えてみたい。
Elements
Elements という言葉には、「要素」という意味がある。空間にも、会社にも、それを形づくる要素がある。
どんな場所にするのか。
どんな仕事をするのか。
誰と関わるのか。
何を大切にするのか。
何を手放すのか。
そうした小さな選択が積み重なって、場所の空気や、会社の輪郭になっていく。
今回の Workspace は、決して広くない。むしろ、できることは限られている。だからこそ、何でも置くことはできない。何でもやることもできない。
その制限が、逆によかった。
広さが限られているから、何が本当に必要なのかを考える。
置けるものが限られているから、優先順位が見えてくる。
小さく始めるから、自分たちらしい形をつくれる。
これは、今のオーバーライトにもそのまま重なる感覚。
何を置くか、何を置かないか
Workspace をつくるとき、最初に考えたのは「何を置くか」だった。
作業するための机。
長く座れる椅子。
資料やアーカイブを置くラック。
打ち合わせをするための小さなスペース。
AIを試し、コードを書き、デザインを考えるための環境。
けれど、考えているうちに大事なのは「何を置くか」だけではないと気づいた。同じくらい大事なのは、「何を置かないか」だった。
広く見せるためだけの家具は置かない。
なんとなく格好よく見えるだけのものは置かない。
自分たちの仕事や思想とつながらないものは、できるだけ置かない。
そう考えると、空間づくりは選択の連続になる。それは会社づくりにも似ている。
どんな仕事を受けるのか。
どんな仕事は受けないのか。
何を強みにするのか。
何を無理に追わないのか。
小さな会社にとって、すべてを持とうとするのは難しい。
だからこそ、何を持つかよりも、何を選ぶかが大切になる。
わずかでも、人の暮らしを背負いながら働く。その中で、自分の理想だけを追って動くのは、正直やりづらかった。安定や売り上げ——そういうことを考えすぎると、どうしても窮屈になって、働きにくくなる。
だから今回は、その枠をいったん取っ払って、本当の意味で”仕事”を定義し直した。
何を持つかではなく、何を選ぶか。その問いから、もう一度始める。
小さく始めること
大きなオフィスを構えることや、立派な設備を揃えることに憧れがないわけではない。けれど、今の Project Reborn に必要なのは、そういう大きさではない。
必要なのは、アナログやノスタルジーと、テクノロジーが溶け合う——そんな場所だ。
考える場所。
つくる場所。
試す場所。
人と話す場所。
アーカイブを置く場所。
それくらいでいい。むしろ、それくらいがいい。
小さく始めることには、身軽さがある。
すぐに変えられる。
試して、違うと思ったら直せる。
必要なものが見えたら、少しずつ足していける。
合わないものは、手放せる。
完成形を先に決めすぎないこと。
余白を残しておくこと。
変化できる状態でいること。
それは、今の時代の小さな会社にとって、とても大事なことだと思う。
AI時代の小さな会社
AIによって、少人数でできることは確実に増えている。文章を書く。調査する。設計する。コードを書く。業務を整理する。以前なら大きなチームが必要だったことも、今では小さな会社でも試せるようになってきた。
ただし、AIがすべてを解決してくれるわけではない。大事になるのは、何をAIに任せ、何を人が考えるのかという判断だ。
AI時代の小さな会社に必要なのは、規模の大きさではなく、判断の軸なのだと。
アーカイブと未来
Project Reborn の Workspace には、90年代から2000年代のデザインやデジタルカルチャーのアーカイブも置いていく予定だ。
Adobe。
Macromedia。
Flash。
音楽。
Tシャツ。
デザイン本。
当時のプロダクトや資料。
それらは、ただの装飾ではない。
自分が何に影響を受けてきたのか。
どんなものに夢中になってきたのか。
何をかっこいいと思ってきたのか。
その手がかりを、日常の仕事のそばに置いておきたい。
AIという新しい技術に向き合うときほど、自分のルーツを忘れないことが大事になる気がしている。
新しいものを追うだけでは、どこかで自分の軸が薄くなる。
古いものに留まるだけでは、未来には進めない。
だから、過去の熱量をそばに置きながら、新しい技術で次の仕事をつくっていく。それが、Project Reborn の Workspace に必要な要素なのだと思う。
会社を形づくる要素
会社にも、必要な要素がある。
売上。
技術。
信用。
関係性。
発信。
場所。
仲間。
思想。
どれか一つだけでは足りない。でも、すべてを一度に揃えることもできない。だから、今の自分たちに必要なものから、ひとつずつ選んでいくしかない。
オーバーライトはこれから、AIを活用した開発や業務改善を軸にしていきたいと思っている。でも、それは今までのWebやデザイン、プロジェクト支援を捨てるということではない。むしろ、それらを土台にして、次の形へ進むことだ。
AIだけでもない。
デザインだけでもない。
地域支援だけでもない。
その重なりの中に、これからのオーバーライトの仕事がある。
神戸に Workspace を構えることも、アーカイブを置くことも、AIを事業の軸にしていくことも、自分の中では別々の話ではない。それぞれが、これからのオーバーライトを形づくる要素になっていく。
Project Reborn とは
Project Reborn は、会社を大きく見せるためのプロジェクトではない。完成した姿を先に見せるためのものでもない。
小さくても、ちゃんと熱量のある会社へ、もう一度つくり直していくためのプロジェクトだ。
何を選ぶのか。
何を手放すのか。
どこで仕事をするのか。
誰と関わるのか。
何を自分たちらしさとして残すのか。
その問いに、ひとつずつ向き合っていく。
今回のテーマである Elements は、家具や道具の話であると同時に、会社の骨格をもう一度選び直す話でもある。
Project Reborn は、過去を連れて前に進むプロジェクトだ。
そのためには、過去を思い出すだけでは足りない。
いま何を選び、何を置き、何を使い、何を手放すのか。
その小さな選択の積み重ねが、これからのオーバーライトを形づくっていくのだと。
次回予告
次回は、Project Reborn と AI について書こうと思う。
なぜ、いま AI なのか。なぜ、AI開発をオーバーライトの軸にしようとしているのか。そして、AIをただの効率化ツールではなく、地域や小さな会社の仕事を前に進めるための力としてどう使っていきたいのか。
Workspace に机やラックを置くように、会社の中にも新しい仕組みを置いていく。次回は、その話を少しずつ書いていきたい。
PROJECT REBORN
原点を見つめ、未来をつくる。
Vol.004 — AI