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PROJECT REBORNVol.001 — RootsA journal of rediscovery.

はじめに

最近、自分は「原点」という言葉を考える時間が増えた。

AIのこと、会社のこと、神戸のこと。そして、自分がなぜものづくりを始めたのか。気がつけば、未来のことを考えているはずなのに、視線は何度も過去へ戻っていた。

その戻り道を、走りながらではなくちゃんと歩いてみようと思って始めたのが、Project Reborn(プロジェクト・リボーン)だ。

とはいえ、これは新しいオフィスをつくりました、という報告でもなければ、派手な新規事業を立ち上げるという話でもない。もっと個人的で、少し地味な——けれど自分にとっては大きな——プロジェクトだ。

ひとことで言えば、もう一度、自分自身と会社の原点を見つめ直すための時間。ここ最近ずっと考えていたことを、少しずつ言葉にして残していこうと思う。これはその第一回。

Roots

Project Reborn の最初のテーマは、「Roots」。すべての始まりは、自分の原点を見つめ直すことだった。

最近、自分は90年代から2000年代にかけてのデザインツールやデジタルカルチャーを、本格的にアーカイブし始めた。

Adobe、Macromedia、そして Flash。Flash というのは、かつてWebサイトに動きやインタラクションを与えていたソフトウェアのことで、いまはもう使われていない。けれど当時は、画面の中で文字や絵がぬるっと動くだけで、未来が少し早くやって来たような気がしたものだ。中村勇吾さんや Koji Nishida さん、ナフタリン、イギリスのデザイン集団 Tomato——当時、自分が夢中になって画面を眺めていた作り手たち。専門的な名前かもしれないけれど、要するに「インターネットがまだ手づくりで、実験だらけで、やたらと楽しかった頃」の空気を体現していた人たちだ。

当時の自分は、彼らのつくったものを夜通し眺めては、これはいったいどうやって動かしているんだろうと画面に顔を近づけていた。正解も教科書もない世界で、みんなが手探りで、誰も見たことのないものを作ろうとしていた。その手づくりの熱っぽさが、たまらなく好きだった。

では、なぜそこまで惹かれたのか。いま振り返ると、あの頃のWebには「正解」がなかったからだと思う。CSS——Webページの見た目を整えるための仕組み——も、今ほど整備されていない。ルールが少ないぶん、Flashを開けば、誰も見たことのない表現を自分の手でゼロから作ることができた。だから当時の自分にとってWebは、「デザイン」というより、まっさらな「遊び場」だった。うまくやる方法ではなく、面白がる方法を、みんなが競うように探していた。いま思えば、自分がものづくりに惹かれた原っぱのような場所は、あの頃の画面の中にあったのだと思う。

みんなが、少しでも新しい表現を、かっこいい表現をしようと鼻息を荒くして、クリエイティブに没頭していた。気がつけば朝になっていた——なんてこともザラだった。ただしんどいだけの徹夜ではない。本当に鎬を削っていた。ヒリヒリするようなエッジが、あの時代にはたしかにあった。

あの熱量を、そっくりそのまま再現したいわけではない。でも、あの頃の「何かを夢中でつくる空気」だけは、いまもう一度取り戻したいと思っている。

Macromedia Flash 5 のヴィンテージTシャツ。褪色した黒地の胸に『FLASH 5 IN NYC』の小さなプリント。自分のクリエイティブの原点を象徴する一枚。
あの頃の熱は、いまも布の上に残っている。

念のため書いておくと、これは単なる懐古趣味ではない。古いものを「懐かしいね」で終わらせるための活動ではなくて、自分の価値観やクリエイティブが、そもそもどこから来たのかを確かめる作業に近い。

不思議なもので、過去をていねいに掘っていくほど、考えが向かうのは未来だった。何を懐かしむかではなく、これから何をつくるのか。そのためにこそ、いったんルーツへ立ち返っている。

会社も、同じだった

個人のルーツを掘っているうちに、会社についても同じことを考えるようになった。

オーバーライトとして、これまで本当にいろいろな仕事をさせてもらった。特にここ数年は、東京の企業との仕事が中心だった。スピード感も、求められる水準も高く、そこで得たものは間違いなく大きな財産になっている。

ただ、東京での日々を重ねるほどに、ひとつの想いが自分の中で育っていった。この経験を、地元・神戸で活かせないだろうか、と。遠くで積み上げたものを、今度は自分の足元に還してみたい。そう思うようになった。

会社にも、個人と同じように原点がある。何のために始めたのか、どんな仕事にいちばん心が動くのか。忙しく走っていると、そういう当たり前のことほど見えなくなる。だからこそ一度立ち止まって、オーバーライトという会社のルーツも、あらためて確かめてみたくなった。

神戸という原点

きっかけのひとつは、神戸のクリエイター交流会に参加したことだった。職種も年齢もばらばらな人たちと話すうちに、地元にはまだ知らない面白い人がたくさんいると気づいた。一緒に何かに挑戦したい人がいる。

同時に、地域の企業と話す中で見えてきたこともある。AI——生成AIのような新しい技術を、業務にうまく取り入れたいと考えている会社。もっと良いデザインを必要としている会社。そういう「困りごと」や「伸びしろ」が、東京だけでなく、すぐ近くにもちゃんとあった。

東京で積み重ねてきた経験を神戸へ持ち帰り、地域の人や企業と一緒に、新しい価値を生み出したい。「AI」「デザイン」「地域」——別々に見えていたテーマが、自分の中で少しずつ一本の線につながりはじめた。

Project Reborn とは

Reborn は「生まれ変わる」という意味の言葉だ。でも、自分の感覚は「生まれ変わる」というより、「思い出す」に近い。

原点へ戻る。でも、ただ戻るだけではない。これまで積み重ねてきた経験を手放さないまま、それを持って、もう一度新しく始めること。過去に戻るのではなく、過去を連れて前に進むこと。それが自分にとっての Reborn であり、このプロジェクトの核にある考え方だ。

原点回帰と聞くと、後ろ向きに聞こえるかもしれない。けれど自分にとってこれは、次に何をつくるかを本気で考えるための、前向きな準備運動のようなものだ。

次回予告

次回は、その「場」の話をしたいと思う。神戸に構える Workspace について書く予定だ。なぜその場所なのか、そこで何をしていきたいのか。少しずつ、このシリーズの輪郭を描いていければと思う。

Project Reborn は、過去を振り返るためのプロジェクトではありません。未来をつくるために、原点へ戻るプロジェクトです。その記録を、この場所に残していこうと思います。

もしこの記録が、誰かが自分自身の原点を見つめ直すきっかけになれば、とてもうれしく思います。


PROJECT REBORN

原点を見つめ、未来をつくる。

Vol.002 — Workspace